第35章 仮病

楓花は何かを感じ取ったのか、そっと瞼を細く開けた。すると南坂海乃が、氷みたいに冷えた目でこちらを見下ろしている。ぎょっとしてすぐに閉じたものの、体がびくりと震えてしまう。

――怖いのだ。

南坂海乃はそれを咎めず、くるりと身を翻すと、入口で焦り顔の黒谷優へ淡々と言った。

「黒谷さん。お子さんの状態、少し厄介です」

黒谷優の胸がひゅっと縮む。――演りすぎたか?

「ど、どうしたんですか。入院ですか?」言葉を継いで、心配そうな顔を作る。「治るならいくらでも出します! 海乃、楓花を助けてくれ!」

「バイタルに異常はありません。でもずっと痛いって訴えてる。それと……『ママのごはんが食べたい』...

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